個人を幸せにするRFIDタグ、あるいは「my Web本棚」企画。
2003年9月20日、yomoyomo in Tokyo Reloadedの後に作成されました。 本稿は2003年9月の雑感から起こしました。
早くも一週間になるyomoyomo in Tokyo Reloadedの思い出話。
ちょっとyomoyomo in Tokyo Reloadedで出てきた話題を挙げてみよう。
RFID、スマートモブ、フラッシュモブ、ウェアラブル、ESR文書の翻訳、 タイムスタンプと位置情報(GPS)、PalmWiki、増井さんの個人用(というか自分用)検索システム、 tDiary、tDiaryはモテ系、wikiの業務での活用、...。
あ、だめだ、すっかり覚えていない。 今にしてようやく、結城さんのyomoyomoさんのオフ会に参加というページのすばらしい心遣いに気づく。 こうやって並べたキーワードを見ると、どんな話だったか何とか思い出せるんだけど、完全にミッシングリンクになってしまった話がいっぱいありそうな気がするな。
そんな中で、RFID話がたださんのただのにっきとyomoyomoさんのYAMDAS現更新履歴で「個人を幸せにするRFID」と取り上げられている。 もちろん、たださんが品川飲み(2)で「タイムスタンプと位置情報(GPS)」を取り上げられているなど、他の話題もあるんだけど、表題になっているのは目を引く。 そして僕もここで取り上げるわけだけど、それはやっぱりyomoyomo in Tokyo Reloadedの席で出た「もっと個人を幸せにするRFIDタグを期待したっていいじゃないか」というような話が心に響いたから...だったらかっこ良かったんだけど。
実は僕はRFIDタグについてほとんど知らなくて、要するに本であれば今は書名などが分かるISBNという番号が付いているけど、今度は何年何月何日にどこの印刷所から出荷された何冊目の本だ、というのが分かるような個別の番号(じゃなくてID)が振られるらしい、という程度だった。 その僕がRFID話に載ろうとするのは、今朝「こういう事をやってくれないかな」と思ったサービスが、RFIDがあると実現し易くなるな、と思ったからなんだ。 だけど、それで話をはじめて終わるわけにもいかないかな。 ということで、勉強と言うにはあまりにも申し訳程度だけど、簡単にまとめてみようと思う。
まずRFIDとは、という話だけど、シャープの「RFID(無線自動識別)システム」のトップページにある説明は簡潔で気に入っている。 もし時間があれば、このページを見てほしい。 でも一応まとめておくと、社団法人日本自動認識システム協会が公開している「自動認識とは」というページに、次のように定義されている。
Radio Frequency Identification。 カード状またはタグ状の媒体に、電波を用いてデータを記録または読出しを行い、アンテナを介して通信を行う認識方法。
それと同じページから、この一文も引用しておこう。
自動認識(Automatic Identification)とは、「人間を介さず、ハード、ソフトを含む機器により自動的にバーコード、磁気カード、RFIDなどのデータを取込み、内容を認識する」ことです。
つまり、「読み取り機の電波が届くくらい近くにあると、自動的に内容が読み取られるカードまたはタグ」がRFIDだ。
考えてみれば、これは要するにSuicaとか自動車のリモコンキーですでに見ているような世界だ。 うまく使えば便利になることは少なからずあるだろうし、最初から「個人を幸せにするRFID」だと思われていても良さそうなものだ。 じゃあ、なんでわざわざ「個人を幸せにするRFID」なんてお題目を唱えなきゃいけないぐらい、そう思われていないのだろう?
RFIDについて定義の他にもう一つ重要なのは、RFIDについて説明した多くの利用例では、バーコードみたいに多くのRFIDに同じ情報(ID)を持たせるのではなく、1つ1つを区別できる固有IDを持たせようとしていることだ。 例えば、日立ハイテクノロジーズのRFID SYSTEMについてのサイトは事例が多くて参考になるけど、ここで紹介されている事例のうち、17/17件がRFIDに固有IDを持たせようとしている。 そのうち、9/17件が個人にそのRFIDを持たせようとしている(車や自転車は数に入れるか悩んだけど、除いた。ペンギンもどうしようか悩んだけど、除いた)。
Suicaとか自転車のリモコンキーと同じなら、個人が持って問題ない、と思われるかもしれない。 でもRFIDだと扱いがちょっと違うのは、「人間を介さず」「近くにくると自動的に」情報を読み取れてしまうからだ。 例えばリーダー(読み取り機)を持っている(持っていないけど)甲府に出張中の僕のわきを、多くの人が通り過ぎたとしよう。 その瞬間、僕のリーダーは彼らの持ち物に付いているRFIDの情報を覚えこんでしまう。 もちろん写真やバーコードと違ってそれらしいそぶりもないので、彼らはそのことに気が付かない。 そして別のある日、人影まばらな町田の公園で僕の前を魅力的な女性が通りかかる。 そのときに僕の読み取り機が、甲府にいたある日に読んだのと同じIDのタグが近くにありますよ、と教えてくれたら? 僕は袖も擦りあわなかったその人に「実は以前甲府で見かけたときにあなたの姿が目に焼き付いていて。それが偶然、こんなところでお会いできるとは」などと白々しく言って、お茶に誘うかもしれない。 しかし我ながら、実にしょうもない、情けない使い道を思いつくものだけど。
つまり、固有タグを持ち歩いていれば、その所有者を特定できる可能性がある。 そもそも、もう一度日立ハイテクノロジーズの例を出すと、8/17件が個人を特定するためにRFIDを持たせる例だ。 さらにその固有タグの読み取りを2ヶ所以上で行えば、個人を追跡できる可能性がある、ということだ。 しかも、知られずに知らせずに読み取れるRFIDの特徴があれば、本人にも無断で追跡できちゃうかも知れない。 固有IDを2ヶ所以上で読み取れるとどんなことが考えられるか、については結城さんの固有IDのシンプル・シナリオをぜひ一読してほしい。
でも、勘違いしないでほしいのだけど、個人を特定できるから、追跡できるからRFIDはいけない、なんてことはない。 日立ハイテクノロジーズの例では、個人を特定するためのRFID8件のうち4件はスキー場などで一日/一回限り持つRFIDだし、3件は職場にいる間だけRFIDを持つという、個人特定/追跡にRFIDが使われるのを本人が了承していて、コントロールできる場面だ。 こうやって良い使い方をしていれば、利便性が大きく危険性は十分に少ないものもある。 功罪両面ある、だから一概に「個人を幸せにするRFID」だとは言われていないのだけど、ちゃんと個人を幸せにする場面も少なくないはずなんだ。
さて、RFIDの勉強はこれまで。 文字通り一夜漬けの僕がこれ以上何を書いたって、良い説明になるわけがないからね。 RFIDが何かってことと、どんな使い方があって、どんなリスク(あるいは解決してもらいたい課題)があるかが分かれば、たぶん話を進めるのには差し障りないと思う。
ようやく本題だけど、今朝、僕はちょっとした難題にぶつかった。 あるシステムのミドルウェアとして動作しているOraleがORA-1555というエラーを起こしたのだが、それについて調査しろ、というのだ。 しかもこのエラーどうやら一筋縄ではいかないものらしい。 どれくらい厄介か、というのを知ったのは、30分ほどGoogleを頼りにWeb上を漂ってからだった。 翔泳社は自社出版書籍の紹介ページに「立ち読みコーナー」というのを設けていて、本の一部をPDF形式で読めるようにしているんだけど、「ORACLE24×7システム構築(下)」のそれにこのエラーの詳しい説明があったんだ。 これで問題が解決した訳じゃないけど、少なくともどうアプローチすれば良くて、何よりもどの程度の期間と作業量を(少なくとも)見込まなければいけないかは分かった。
と、同時に思ったことがある。 僕はこの半年以上、出張をしていて、自宅や会社に蓄えこんだ書籍類を(それは僕の大事な筋肉なのに!)利用できないでいる。 「ORACLE24×7システム構築」程プロフェッショナルな本じゃないけど、Oracle関連の本も4、5冊あるはずで、あれをWeb経由で読めたらどんなに楽だったか、と思ったんだ。 そりゃあ、Web上で全文を読めるようにしてしまうなんてことは(O'Raillyやその他一部を除く)出版社から見れば、書籍販売の息の根を止める用に見えるかも知れない。 でも、購入者を対象としたお客様サービスでもだめなの? 確かに、これまではWebにアクセスして来た人が購入者かどうか分からなかったけど、だって今やRFIDがあるんだ。
僕が提案するフローはこんな具合だ。 まず、前提。
で、フロー。
いくつか補足を。
どこでどれだけの情報を流すか、というのは要検討事項だけど、こんな感じで良いんじゃないかな。 できるだけ最小限にする方向で。
| フロー | From | To | 内容 | ステータス |
| (1) | 印刷所(倉庫) | 出版社 | RFID、ステータス、出荷日時、出荷先 | 出荷 |
| (2) | 書店(倉庫) | 出版社 | RFID、ステータス、書店ID | 入庫 |
| (3) | 書店(レジ) | 出版社 | RFID、ステータス、書店ID | 販売 |
| (4) | 購入者(パソコン) | 出版社 | RFID、ステータス、ユーザーID | 購入 |
すべての情報は出版社に集まる訳だけど、出版社は以下のようなRFIDデータベースしか持たないことにする。 履歴情報を取って個人プロファイルしたりは厳禁。
| RFID | ISBN | 販売ステータス | 購入ステータス | 所在 |
| ID番号 | ISBN番号 | 済 or 未 | 済 or 未 | 書店ID or ユーザーID or 空 |
基本的には各所の在庫管理と、それから「書籍販売タグ」(本を買う時に、レジの人が本から抜き取るアレ)と「ご愛読者カード」(本に挟まれている葉書)でやっていることの電子化だ。 「ご愛読者カード」ししばしば(プレゼント応募などの名目で)住所、氏名などの記入欄があったことを考えると、情報量としては減っている部分もある。 それでいて出版業界、書籍小売業界の要望である在庫管理の省力化、盗難被害の防止などでは前進すると思うし、一方で購入する僕らから見ればデメリットなくご愛読者サービスの向上を期待できるんじゃないかとおもうんだけど、どうだろう?
そうそう、これをビジネス化する時に僕に断る必要はない。 でも、明日以降にビジネス特許申請をしようとした時などには、僕が「2003年9月30日にWeb上に僕が公開した物と類似性が認められる。新規性の欠如により、不適格だ」と強く訴えるので、それはやめておくことをお勧めする。 このページはWikiだから書き換えられるけど、更新履歴はメールとして残しているし、このページのPDFも作っておくし、この項に言及してくれるサイトが出てくればそれらも証拠になることをここに明言しておこう。
上で僕が挙げた話のポイントは、書籍流通を良くしようということじゃなくて、これからは僕らは「購入者証明をできる」ということだ。 だから流通者も、製造、販売者も、商品購入者だけを対象にしたサービスができる。 つまりこれって、パソコンメーカーがユーザー(シリアル番号とユーザーIDをメーカーに登録する)に対して行っているサービスを、他の業界でもできるようになるってことだよ。 きっとこれから、特に在庫管理の面で現在主流のバーコードからRFIDに切り替えてくる業界は多いだろう。 その時には、ぜひ次の二つのことをお願いしたい。
生み出せる付加価値って、とてもいっぱいあるはずだ。 ユーザーサービスとか購入者サービスをまだやってない業界の人は、すでにやっている業界があるのだから、そこを見れば答えは掃いて捨てるほど(実際、選り分けてどんどん捨ててかないといけないぐらいだろうね)転がっている。 もちろん、なかには追加料金が必要な付加価値だってありうるだろう。 例えばmy Web本棚だったら、ディスクが必要なことを考えて、100円/100MB・月ぐらいか10円/一冊・月ぐらいが必要かもしれない。 それでも、そういう選択肢が増えることを僕は歓迎する。 福次効果で、書籍業界の流通事情が良くなるなら、それもそれで結構なことじゃないか?
ということで出版業界には、Web本棚をぜひお願いしたいな。 なんでもかんでもRFIDタグを使うのが良い、なんてことは間違っても言う気はない。 でもね、RFIDタグだって悪いヤツじゃないんだ。 せっかくだもの、みんなで幸せになろうよ。